この土地では天狗の団扇がそよぐたび雨が降る
私は財布を持ち、傘を持たずに駅前の宿を出た
夜見という名の半島を盲腸線は霊峰から離れて辿る
その終端の駅前から
港町の港の
さらに陸地の尽きる方角へ
roadがのびている
港町の対岸は鬱蒼とした山である
十一月の始めの夜ははっきり冷たく
川に架かる橋に差し掛かるまでに
降り出しそうな雲模様は
霧のような雨となり
やがて誤魔化しようもなく夜の雨になった
Roadの両側には点々と青銅のstatueが連なっている
彼らは付喪神でありまたは神であり
または漫画の枠線のあるいはテレビの中の住人である
居るけれども見えぬものを
見えるようにするために
苦心して与えられたのがこれらのかたちである
これらの像は、その苦心と、かたちと、
かたちを与えられた見えぬものを顕彰するものである
彼らはいつの間にか増えているようだ
小さなものはあるいは小さいまま
また小さいものが大きくなり
大きなものが小さくなっている
大きくなっているのは少年の小さな下駄
一方で八つ頭の龍の髭は風に震えて折れんばかり
Roadの両側は商店街になっている
もともと生活の品を売る店が立ち並んで
近ごろは青銅の細工を見に来る人を相手にしたり
昼も夜も寝ている店もある
薬局
プラモ屋
レコード屋
煮干しと飴
ソフトクリーム
焼き芋
理髪店
et cetera
今はみなガラスの内は暗い
晩だから
通りは静まり返っている
いや
突如高まる噴水の水音
ショーウィンドーを妖しく照らす電飾
少し離れて後ろからぺたぺたと足音がする
あなたを驚かすこれらどれも
よう来てごしなったナという
歓迎のしるしなのである
なにしろここは観光地なのだ
ひんやりとした夜の石畳を音もなく
光の円が滑っていく
浮かび上がるのは妖怪たちと
チャンチャンコを着た少年のSilhouette
朝から働いて疲れた商店主たちが家に帰って
風呂に浸かっている時刻でも
夜歩きが寂しくないように
それでも心細い旅人のために
明かりを点けている店がある
店内にはラジオが流れ
星屑バンドのメンバーが話している
私はタオルを一本買い、宿へ戻った
ゴム草履の足音の主が
入れ替わりにぺたぺたと入店し
とりどりのキーホルダーを眺めていた
来た道を北東から南西へ
柳の木、酒蔵と古い旅館
今はまた雨はやんで
水道に停泊した船を撫でた同じ風が吹いていく
終列車から三本前の列車が時報のように
人間の光を煌々と引いて入ってきた



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