2019年10月23日水曜日

ル・グィンを読んで作った詩 2篇

母の声(inspired by U.K. Le Guin Winter′s King)

                 (2018.Sep.9)


 声が聞こえる
 男でも女でもない声
 胎内から出たこともないのに
 そのどちらかがわかるわけがないじゃないか
 その声はいまわたしがいる暗闇
 そのひとの声だ
 温かい暗闇そのものが震えるから
 わたしはわかる
 わたしはその声をおぼえた。
 光の中に出てからも

 その声はいつも話している
 自分の行為によってわたしを生み出してしまったから
 心配しているのだ
 心配することなどないのに。

 その声は大切なことしか言わないから
 わたしはいつも耳を傾けている
 やぶで遊んでいるときも
 試験を解いているときも
 その声はあらゆることを語る
 そのひとはどこから来たのか
 この世界とはどんなところか
 危険について
 理想について

 舌が消え、頭蓋が滅びても
 その声はわたしにやさしくささやきつづける
 やがてわたしが暗闇のなかへ戻っていくとき
 暗闇の中で
 その声を最後に聞くだろう。



あなたの・にのうで 


 
 あなたの肩からつづくあなたのにのうで
 袖なしから溢れ出るあなたのにのうで
 細いほうではなく太いほうのにのうで
 もし必要がないときは何も着ようとはしない
 あなたのにのうで

 おりたたまれて隙間を柔らかい肉が埋めている
 肌色は人間の肌のグラデーションのある点を示している
 細い、けれど短くはないうぶ毛が輪郭を少しあいまいにしている
 胴にひきつけられて手元を安定させている
 にのうで
 私が触れたとすれば
 冷たく そして温かい
 あなたのにのうで